最近、口ゴボ(クチゴボ)という言葉が広まっています
口がボコッと出ているように見える状態で、鼻と顎のラインより唇が外に出ている状態のことです
世間で口ゴボという表現が広まったのは数年前のことですが、以前からこの症状に悩まされていた方はたくさんいらっしゃいます。
口元がゴボッと膨らんで見える症状で、見た目の印象に大きく関係することから、治療によって改善したいと深刻に捉えている方も少なくないことでしょう。
今回はそんな口ゴボの症状が現れる原因と治し方について詳しく解説をします。
口ゴボの原因
口ゴボの原因としては、歯並び・遺伝的要因・加齢による影響の3つが挙げられます。
歯並び
口ゴボの背景には、上顎前突(じょうがくぜんとつ)や上下顎前突(じょうげがくぜんとつ)といった悪い歯並びが潜んでいることが多いです。
上顎前突はいわゆる出っ歯で、上の前歯が顎の骨が前方に出ている状態です。
上下顎前突は、文字通り上下の顎両方にその症状が見られる状態です。
どちらも前歯や顎の骨が口唇を前方へと圧迫するため、口元がゴボッとして見えるようになります。
遺伝的な要因
骨格の異常に由来する口ゴボは、遺伝的要因が色濃く見られます。
これも広い意味では上顎前突や上下顎前突といった歯並び・噛み合わせの問題へと帰着しますが、生まれた時から決まっている要因なので、改善するのもそれ相応の労力が必要となります。
具体的には、外科手術によって骨を削り、上下の骨格を正常な位置に調整する必要があるのです。
こうした遺伝的な要因による口ゴボは、家族内で共通して見られる症状であることが多いといえます。
ですから、口ゴボの症状に悩まされている方は、ご兄弟やご両親の口元にも同じ症状が見られないかどうかを確認してみると良いです。
加齢
人は年を取ると、歯並びや噛み合わせ、歯周組織の状態に変化が見られるようになります。
例えば、加齢によって歯茎や顎の骨が下がると、歯が不安定となり、出っ歯や口ゴボになることも珍しくありません。
口腔周囲の筋肉が衰え、口元が弛んで口ゴボの症状が現れるようになることもあります。
ちなみに、私たちの歯は、加齢とともに前方へと移動する性質があるため、年齢が高くなるほど口ゴボの症状が現れやすくなる点にも注意する必要があります。
口ゴボの原因は歯並びと骨格の影響が大きく、生まれつき(遺伝によるもの)の原因と、年令を重ねるごとに口ゴボになりやすくなります
口ゴボの治療法
口ゴボは、さまざまな方法で改善することが可能です。
ここでは加齢による口ゴボと歯並びによる口ゴボに分けて、治療法をご紹介します。
マッサージ
加齢によってお口周りの筋肉が衰えたり、弛んだりすることで口ゴボになっているケースは、マッサージによって改善の効果が見られる場合があります。
同時に、口腔周囲筋を鍛えることも必要です。
お口周りの筋肉が正常に機能するようになると、歯列に適切な圧力が加わるため、上下の前歯が前方に傾く、あるいは出ていく現象を防げます。
ただし、これはあくまで対症療法であり、口ゴボになっている根本的な原因を取り除く方法ではないので、目に見えるような効果が見られないことも多々あります。
とはいえ、口腔周囲の筋肉や皮膚のマッサージおよびトレーニングは、歯列のみならず、食べる・飲み込む・しゃべる・呼吸する機能全般に良い影響をもたらすことから、お口の健康維持・増進につながることも間違いありませんので、皆さんも実践してみてください。
マッサージでは根本解決はできないが場合が多い
矯正治療
口ゴボの原因を根本から除去する方法としては、矯正治療が挙げられます。
矯正治療であれば、歯並びのみならず、骨格的な異常が原因で口ゴボになっているケースも改善が見込めるため、口元の突出感にお悩みの方には広くお勧めできます。
◎口ゴボを改善できる矯正治療の種類
口ゴボの症状を改善できる矯正治療の種類としては、小児矯正、ワイヤー矯正、マウスピース矯正の3つが挙げられます。
矯正治療で歯並びを改善すれば効果的な治療が見込めます
小児矯正
小児矯正は、文字通り子供の頃に受ける矯正治療です。
顎の骨の発育を正常に促すことができるため、骨格的な異常に起因する口ゴボも根本からきれいに改善することが可能です。
けれども、小児矯正は6~12歳くらいの発育期が対象となることから、当然ですが大人になってからは受けられません。
ですから発育期のお子さんの口ゴボを治したいと考えている場合に限り、推奨することができます。
6〜12歳くらいなら小児矯正がオススメ
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、金属製のワイヤーとブラケットを歯の表面に固定して歯を動かす治療法です。
いわゆる歯列矯正の一種であり、永久歯が生えそろった人であれば、何歳からでも受けられます。
口ゴボの原因となっている上顎前突や上下顎前突もワイヤー矯正できれいに治せることが多いです。
ただ、ワイヤー矯正にはいくつか大きなデメリットが伴う点に注意しなければなりません。
具体的には、矯正装置が目立ちやすい、歯の移動に伴う痛みが強い、ワイヤーや結紮線(けっさつせん)が歯茎や頬の内側の粘膜を傷つけることがある、装置が破損する恐れがあるため食事に制限がかかる、歯磨きがしにくく虫歯・歯周病リスクが高くなる、1ヵ月に1回は通院しなければならない、発音障害が現れやすい、といったデメリットです。
ワイヤー矯正には、かなり多くのデメリットがあるので、近年は後段で解説するマウスピース矯正を口ゴボの治療法として選択する人が増えてきています。
以前はワイヤー矯正が一般的でしたがデメリットもあります
マウスピース矯正
透明な樹脂製のマウスピースを使って、歯並びを改善する治療法です。
世界的にはインビザラインが有名で、最近ではアソアライナーのような国産のマウスピース矯正も普及するようになりました。
そんなマウスピース矯正を口ゴボの治療法として選択すると、次に挙げるようなメリットが得られます。
口ゴボの治療にはマウスピース矯正のメリットが大きく、近年急速に普及しています
【マウスピース矯正で口ゴボを治すメリット】
マウスピース矯正には多くのメリットがあり、今選ばれている矯正方法です
メリット1:マウスピースは透明で目立たない
マウスピース矯正が画期的なのは、一見すると何もつけていないように見える点です。
とくにインビザラインは、透明なマウスピースを歯の部分だけに装着することから、ワイヤー矯正はもちろんのこと、他のマウスピース矯正よりも目立ちにくくなっています。
メリット2:歯を弱い力で少しずつ動かす
マウスピース1枚で動かせる歯の距離は、0.25mm程度といわれています。
これはワイヤー矯正の半分くらいの距離なので、歯にかかる圧力や移動に伴う痛みもその分、少なくなります。
メリット3:マウスピースは装着感が良好
矯正用のマウスピースは薄くて表面が滑らかなので、装着感がとても良いです。
歯茎や頬の内側の粘膜を傷つけるリスクも皆無に等しいといえます。
メリット4:いつも通りに食事を楽しめる
矯正用のマウスピースは、食事をする時に取り外します。
何もつけていない状態でご飯を食べられることは、この上ない幸せといえるでしょう。
メリット5:装置を外した状態で歯磨きできる
マウスピース矯正では、歯磨きの時にも装置を外せます。
ブラケットに食べかすや歯垢が残るおそれがないことから、矯正中の虫歯・歯周病リスクも低減できます。
メリット6:頻繁に通院する必要がない
マウスピース矯正のインビザラインは、2ヵ月に1回の頻度で口ゴボの治療を進めることが可能です。
メリット7:発音しやすい
矯正用のマウスピースは、歯列にぴったりフィットするように設計されており、突起物などが付随していないことから、発音障害が現れにくいです。
まとめ
今回は、口ゴボの原因と治し方について解説しました。
口ゴボの原因としては、歯並び・遺伝的要因・加齢の3つが挙げられますが、多くのケースで矯正治療による改善が有効となっています。
とりわけマウスピース矯正は装置が目立たず、痛みも少ない、さらには食事や歯磨きを普段通りに行えるということもあり、口ゴボの治療法としては歯科医師としても推奨しやすくなっていますので、関心のある方はお気軽にご相談ください。
クチゴボは歯並びがキレイでも発生する場合があります
マウスピース矯正による治療で改善が見込まれるので、気になる方は矯正歯科医に相談ください
投稿・監修者プロフィール
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