過蓋咬合(かがいこうごう)は歯の噛み合わせの異常の一種で、前歯が下歯より前に出てしまっているので噛んだときに上下が一致しない歯並びのことです
皆さんは「過蓋咬合(かがいこうごう)」という噛み合わせの異常をご存知でしょうか?文字通り過剰に蓋がされている噛み合わせで、さまざまな問題をはらんでいます。
過蓋咬合は、診断名のひとつであり、歯科医院での積極的な治療が必要でもありますので、この症状に心当たりのある方は十分にご注意ください。
ここではそんな過蓋咬合を原因・症状・治療法・予防法という観点から徹底的に解説します。
過蓋咬合とは?
はじめに、過蓋咬合の基本事項から確認していきましょう。
冒頭でも少し触れましたが、過蓋咬合は「噛み合わせが深い状態」です。
正常な噛み合わせとは見た目も明らかに異なるため、比較的自覚しやすい不正咬合といえるでしょう。
比較的自覚しやすい症状です
過蓋咬合の原因
過蓋咬合の根本的な原因としては、以下の3つが挙げられます。
原因1:上下顎のサイズのアンバランス
過蓋咬合の症状は、基本的に上顎が下顎よりも大きい場合に現れます。
最もわかりやすいのは上顎が標準よりも大きく、過剰に発育したパターンで、下顎が正常であっても過蓋咬合になりやすいです。
逆に、上顎が正常であっても、下顎が標準よりも小さい場合も過蓋咬合の症状が現れることがあります。
ですから、過蓋咬合において重要なのは、上下の顎のバランスなのです。
原因2:上下顎の前後的な位置のアンバランス
上下の顎の大きさがともに正常であっても、その位置がズレていると過蓋咬合になりやすいです。
具体的には、上顎が前方にズレている、あるいは下顎が後方にズレていることで、過蓋咬合の症状が現れる場合があります。
原因3:前歯の傾きの異常
上下顎のサイズや前後的な位置関係が正常であっても、上の前歯が前方に傾いていたり、下の前歯が後方に傾いていたりすると、過蓋咬合になりやすいです。
こうした前歯の傾きの異常による過蓋咬合は、比較的治しやすいといえるでしょう。
過蓋咬合の根本原因は上下の歯のバランスが悪いこと
◎過蓋咬合の誘因について
上段では、過蓋咬合の根本的な原因について解説しましたが、そこに至るまでに関連してくる習慣・習癖があることも知っておく必要があります。
それは口呼吸や舌で歯を押し出す癖、唇を噛む癖などです。
いわゆる口腔習癖は、前歯の歯並びや骨格の発育の遅れをもたらすことが多いため、小さなお子さんがいらっしゃるご家庭では十分にご注意ください。
その他にも、口腔内の癖が原因となることも
過蓋咬合の症状
正常な噛み合わせは、上顎の前歯が下顎の前歯を2~3mm程度、覆っています。
過蓋咬合の場合は、その値が極端に大きくなったり、下顎の前歯がまったく見えなくなったりするため、鏡でセルフチェックすることも可能です。
もちろん、過蓋咬合というのはもう少し複雑な不正咬合なので、精密な診断は歯科医師でなければ下せません。
過蓋咬合の症状があるか?鏡でセルフチェックしてみよう
◎歯並びはきれいなのに治療が必要?
過蓋咬合では、上下の歯並びがきれいに並んでいるケースも珍しくありません。
一見すると正常な歯並び・噛み合わせに見えるため、わざわざ高いお金と長い時間をかけて治療する必要性はないのでは?と感じる方も多いかと思います。
けれども実際はそう単純なものではなく、歯並びがきれいに見えても歯列矯正が必要となるケースも珍しくないのです。
それは過蓋咬合にさまざまなリスクを伴うからです。
◎過蓋咬合による悪影響
過蓋咬合を放置していると、次のような症状や悪影響が生じることがあります。
悪影響1:そしゃく障害
過蓋咬合では、食べ物を前歯で効率よく噛み切ることが難しく、奥歯ですり潰す機能にも問題が生じます。
その結果、あまり噛まずに飲み込めるものばかり選ぶようになってしまうのです。
悪影響2:胃腸に大きな負担がかかる
食べ物を十分にそしゃくせずに飲み込むと、そのツケは胃や腸といった消化器へとまわります。
普段から胃や腸に不調が見られる方は要注意です。
悪影響3:顎関節症のリスクが上がる
過蓋咬合でのそしゃく運動は、奥歯と顎関節に大きな負担がかかりやすいです。
奥歯の被せ物やブリッジ、入れ歯などが壊れやすかったり、顎関節症の症状が認められたりする場合は、過蓋咬合による影響が疑われます。
過蓋咬合では、奥歯の寿命も短くなりやすいため、お口全体の健康に悪影響を及ぼす噛み合わせともいえるでしょう。
過蓋咬合だと食べ物を効果的に噛めないので消化器官への影響がある。普段から胃が不調で過蓋咬合の症状があるかたは治療を検討してみては?
過蓋咬合の治療法
続いては、過蓋咬合の治療法について解説します。過蓋咬合は、ケースによって原因が異なるため、治療法も患者さんによって変わるのが現実です。
その中でも広く適応できるのが「歯列矯正」です。
主な治療方法は歯列矯正
◎歯列矯正とは?
歯列矯正は、歯並びの乱れを細かく整える方法で、マウスピース矯正やワイヤー矯正が挙げられます。
過蓋咬合の原因となっている前歯の傾きや上下顎の位置のアンバランスは、歯列矯正で改善できることが多いです。
とくにマウスピース矯正は、患者さんの心身にかかる負担が少ない治療法なので、過蓋咬合の症状に悩まされている多くの方に推奨できます。
◎過蓋咬合をマウスピース矯正で治すメリット
・装置が透明で目立ちにくい
・歯の移動に伴う痛みが少ない
・装置でお口の粘膜を傷めるリスクがほとんどない
・食事と歯磨きの時に装置を外せる
・発音障害が出にくい
・装着時の違和感、異物感が少ない
・通院頻度が比較的低い
このように、マウスピース矯正にはワイヤー矯正にないメリットがたくさんあるため、過蓋咬合の治療を検討している人には強くおすすめできます。
ただし、マウスピース矯正にも「適応範囲が比較的狭い」「マウスピースの装着時間を厳守しなければならない」といったデメリットも伴いますので、その点も理解した上で選択することが大切です。
過蓋咬合の治療はマウスピース矯正がメリットが多くお勧めできる
マウスピース矯正による過蓋咬合の治療例
当院での過蓋咬合の治療例を紹介いたします。
歯列のアーチがやや狭く、それにより上下の前歯部にガタつきが生じている状態でした。
小臼歯部をわずかに広げてスペースを作ることで、お口元を整えつつガタつきを改善しています。
※その他の事例は以下ページより
マウスピース矯正治療の治療例
子供の過蓋咬合予防
過蓋咬合は、子供の頃から予防に努めることで、大人になってから苦労することもなくなります。
具体的には、上でも解説した「過蓋咬合の誘因」を取り除くことが子供の過蓋咬合の予防へとつながります。
もしもお子さんに口呼吸や舌癖、指しゃぶりなどの悪習慣が見られる場合は、できるだけ早期に改善するよう努力しましょう。
お子さんの口腔習癖を家庭内で改善するのが難しい場合は、歯科医院の力を借りてください。
歯科医院では、口呼吸や指しゃぶりを改善するための治療が受けられます。
子どもの過蓋咬合は舌の動かし方や指しゃぶりなどの悪習慣も同時に見直そう
大人の過蓋咬合予防
大人になってから過蓋咬合になる人も少なくありません。
子供と同様、口呼吸や舌癖は、歯並び・噛み合わせを悪くする誘因となることから、意識的に改善するようにしてください。
また、過蓋咬合以外の噛み合わせの異常があったり、経年的な歯の摩耗や歯科治療で装着した装置に問題があったりする場合も噛み合わせが深くなることがあります。
そうした異常は、患者さん本人が自覚することは難しいため、定期的に歯科検診・メンテナンスを受けておいた方が良いです。
3~4ヵ月に1回くらいの頻度で歯科医師による診察を受けていれば、過蓋咬合を招く症状や異常は、早期に発見できることでしょう。
大人の過蓋咬合は悪習慣の他に経年の歯の摩耗や他の歯の治療に原因があることも、
定期的な歯科診断を受けよう
まとめ
今回は、過蓋咬合の原因や症状、治療法などを解説しました。
上下の歯列が標準よりも深く噛み合っている過蓋咬合は、歯や顎関節に大きな負担をかけたり、そしゃく障害を招いたりするため、適切な方法で改善するのが望ましいです。
多くの過蓋咬合は、歯科医院での矯正治療で治すことが可能となっていますので、深い噛み合わせに悩まされている方は、矯正歯科に相談することをおすすめします。
過蓋咬合の原因によっては、一般歯科での治療が必要となることもありますが、基本は歯並び・噛み合わせの専門家に診てもらうのが良いといえます。
過蓋咬合は一般的な歯科医院より歯科矯正の専門医院に相談しよう
投稿・監修者プロフィール
- このブログでは、患者様や一般の方々が歯科医療に関する理解を深め、健康な歯と口腔を保つための情報を提供しています。新しい治療法や予防のためのケア方法、口腔衛生に関するヒントなど、幅広いトピックにわたって記事を更新いたします。